契約シンデレラ
年に一度企業に義務つけられている社員の健康診断。
さすがに龍ヶ崎建設ほどの大企業では全員が集まって一斉に検診を受けることはできない。
そのため医務室が全社員の検診スケジュールを立ててクリニックの予約をしていくしかない。
もちろん個々の既往歴などを踏まえて産業医に確認しながらの作業となるのだが、新年度が始まる今の時期はその作業に追われることとなる。

「おはようございます」

朝の出勤時間に合わせて真也さんが現れた。

「真也さん、おはようございます」

「晶、今日はこっちで勤務なんだな?」
「ええ、健康診断のスケジュールを組まないといけないので」
「そうか、俺も今日は一日こっちだ」

医者とは言っても、産業医が実際に検査や治療を行うことはない。
あくまでの企業に勤める従業員の健康と職場環境の管理が仕事で、新入社員や長期欠勤者の健康状態を把握したり復職に向けた審査にかかわったりもする。

「さあ、みんなで手分けして大まかなスケジュールを作ってしまおう」
「「はい」」

真也さんの一言で、医務室にいたメンバーの手が一斉に動き出した。
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