契約シンデレラ
「ここでいいか？」
「ええ、お任せします」

真也さんと共に向かったのは、駅周辺にある洋食屋さん。
決して高級店ではないけれど、落ち着いた雰囲気の素敵なお店だった。

「急に誘って悪かったな。大丈夫だったか？」
「ええ、平気です」

母が亡くなってから、私はずっと一人暮らしだった。
いつ帰ってくるかわからない父のことは気にしたこともなかったし、自分がどこにいるのかを報告する相手もいなかった。
だからかな、遅くなると言っていた圭史さんよりも早く帰れば問題ないだろうと勝手に思ってしまった。
本当ならこの時点で、『海田先生と夕食を食べて帰ります』と連絡をしておくべきだったのかもしれない。
それは一緒に暮らす相手への最低限のマナーだと、このときは気が付かなかった。
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