契約シンデレラ
結局、真也さんは私のことを心配して夕食に誘ってくれたらしい。
私が友人の家に居候していると話すと、それ以上突っ込んで聞いてくることはなかった。
懐かしい昔話や会社での出来事を面白おかしく話しながら、夕食の時間は楽しく過ぎていった。
最初は食事だけのつもりだったけれど、せっかくだからとワインを勧められグラスを何杯か空けてしまった。
もちろん酔っぱらうほどではないけれど、少し気持ちよくなって店を出た。

「送って行くよ」
「え?」

店を出たのは九時半を回った頃。
都内の繁華街は夜もにぎやかで、道も明かるい。
幸い圭史さんのマンションは電車で二駅先で、歩いても二〇分ほどの場所。
送ってもらわなければならないような距離ではない。

「飲んでいるだろ?」
「少しだけだから、大丈夫よ」
「ダメだ」

こうなったら真也さんは引いてくれないだろう。
仕方がないから、マンションの近くまで送ってもらうしかなさそうだ。
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