契約シンデレラ

恋は突然落ちる物ですか?

「何をしているんだっ」

頭一つ高い位置から降ってきた怒りの声。
驚いて見ると、対外的には温厚な性格で通っている圭史さんが別人のように眉を吊り上げている。
もちろん二人の時には注意されたり小言を言われることはあるが、こんなに怒っている姿は私も初めて見た。

「どうしたんですか?」

きっと怒りの原因は私にあるのだろうと思いながらも、怖さよりも驚きの方が勝ってしまい逆に訪ねてしまった。

「どうしたもこうしたも、帰ってみたらお前はいないし、電話にも出ない」
「あぁ・・・」

そう言えば昨日充電するのを忘れていて、スマホの電池が切れていたんだった。
私に電話してくるのなんて理央くらいなものだからと、うっかりしていた。

「遅くなるならなるで連絡くらいしろ」
「すみません」

きっと心配をかけたのだろうなと謝ってはみたものの、私にだって言いたいことはある。
そもそも圭史さんだって、たまたま今日の帰りが早かっただけで、いつもはほぼ午前様。
もちろん仕事だとは思うけれど、いつ帰ってくるかわからない相手を待っているのは私も一緒だと思う。
それでも、住まわせてもらっている居候の身としては口には出せない。

「とにかく、帰るぞ」

言うだけ言ってからくるりと方向転換し背中を向けた圭史さんはすでに歩き出そうとしている。
仕方ない。
本当は明日のパンを買って帰るつもりだったけれど、さすがに今は言い出せない。
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