契約シンデレラ
「すまない」

どのくらいの時間経った後だろうか、放心状態の私に声がかかった。

「いいんです」

正直、圭史さんに謝ってもらう必要はない。
唐突なキスではあったけれど私も拒否しなかったし、実際不快感はなかった。
ただ、驚いただけだ。

「それにしても、むかつくな」

え?
抱き締められたままの私に向けられた言葉の意味が分からず、頭をあげた。

「圭史さん?」

一体どうしたというのだろう。

「晶が他の男のせいで泣いているのが、無性に腹が立つ」
「それは・・・」

確かに、私の涙の原因は真也さんだ。
もちろん私の行動に問題があるのだろうとは思うけれど、真也さんに軽蔑されたようで悲しくなった。
でも、なぜ圭史さんが怒るのかはわからない。

「それで、これからもうちのマンションに住んで大丈夫なのか?」
「ええ。このままお世話になります」

真也さんのこともあり本当にいいのかと聞かれているのだろうが、その心配は無用だ。
私は自分の意志で圭史さんのマンションにやって来たのだから。
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