契約シンデレラ
「なあ晶」
「はい」

結構長い時間抱きしめられている気がするのに圭史さんの腕が緩むことがなくて、私たちはエレベーターの中にとどまっていた。
本来なら男性と二人きりなんて緊張するはずなのに、不思議と緊張感もなく私も身を任せたまま。
いくらペントハウスに向かう専用エレベーターとはいえ冷静に考えると恥ずかしくなる。

「遅くなる時には、連絡をしてくれ」
「・・・はい」

きっと心配をかけたのだろうなと、素直に言葉が出た。
でも・・・

「そろそろ、離してもらえますか？」

抱きしめられたままでは身動きが取れない。

「そ、そうだな、すまない」
慌てて距離をとってくれる圭史さんの顔が少しだけ恥ずかしそう。

「いえ、別に謝ってほしいわけではなくて・・・」

圭史さんの反応に私も赤面しそうになって、下を向いてしまった。

「じゃあ帰ろうか」
「はい」

圭史さんが私の手をそっと握り最上階のボタンを押すと、エレベーターは動き出した。
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