拝啓、私の想像で作り出された彼へ
私の世界


「キャー!おめでとう!ついに美夜も彼氏持ちか〜!」



ガヤガヤとうるさい放課後の教室。


そのうるささに私はいたたまれなくなった。


逃げるように靴箱へ向かった。



「あ、なぁあいつ天舞音ってやつじゃね?」

「うわ、ホントだ。あいつんちお金持ち何だろ?」


ビクンッ!


知らない男の子に私の名前を呼ばれて怖くなった。


急いで、ローファーに履き替えて私は学校を出た。



「お金持ち、か。」


その通りだった。



私の家は、代々続く有名な会社ー蕗という。食品はもちろん工業など世界的にも有名な会社の令嬢だ。





「お嬢様。お迎えにあがりました。」


老人みたいな声を出したこの人は、私の家で代々執事をやっている梁部《やなべ》さんだ。

「梁部さん。私、1人でまだ帰れるんだけど…」


「いえいえ。お嬢様を守るのが私のお役目。」


私は、こういう堅苦しい感じが大嫌いだ。

「さぁ、どうぞ。」

そう言って、梁部さんは黒塗りのベンツのドアを開けた。

さすが高級車、とでもいうように車内はピカピカで傷はおろか汚れすらもない。




乗ったあとは、お決まりのこの時間。


想像の時間。



スタートだ。
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