放課後の片想い
思うように弾けない日々はストレスの塊だった。



身体の痛みや打撲や傷は日が経つ毎に良くなっていくのに、指だけが言う事をきかない。

指も痛みは感じなくなっていたが、以前のようには動かせなかった。




半年が経った医者に

「精神的なものですね」

と、診断された。


はじめは転倒のせいでの痛みなどだったが、どこかのタイミングで俺自身が《弾けない》と思い込んだようで指がコントロール出来なくなってしまったようだ。


気持ちの問題だから、それが解決すれば大丈夫と言われたが俺の中で何かが崩れた。


なんだよ、気持ちって。


俺は弾きたいんだよ。

気持ちの問題だからって簡単に言うなよ。



ピアノで将来を考えていた俺を知っているからか、母さんは泣いていた。


父さんは黙っていた。






それからというもの、全部がどうでも良くなった。

進学だって正直どうでもいいから勉強する気も起きなかったけど、高校は行けと父さんに言われ渋々勉強はしていた。


ピアノはあの診断の日から全く弾かなくなった。

と言うより、ピアノから離れる事にした。


見ると辛いから。



だから、音楽の授業はなかなか辛かった。





中3になった頃。


父さんから話があると言われ、夜に3人で家族会議的なものが開かれた。
< 147 / 400 >

この作品をシェア

pagetop