放課後の片想い
「話したい事が3つある」


「むっちゃあるやん」

こんな風にツッこんでしまうのは関西人の性だろうか。



「まずは精神科の良い先生を見つけたから明日行ってこい」

「は?」

「指を治すんや」

「無理やって。病院とかもうええし」


自暴自棄に拍車がかかっていた俺は、父さんの提案に全く乗り気になれなかった。



「絶対に行け」

「無理」

「悠!お父さんがたくさん探してやっと見つかったのよ!!」


母さんが俺の態度に痺れを切らしたのか、珍しく大声を出した。


「…んな簡単なもんじゃないねん…!!」

「…わかってる。でも頼むから一度だけでもいいから行ってくれ」


ほんまは父さんの気持ち、痛いぐらいわかってる。

やけど

素直になられへん。


嬉しい反面、もうピアノを忘れたい気持ちも強くなっていた。



「あと…お前が高1になる前に関東に引越しが決まった。父さんの仕事の都合だ」

あっ、そうなんや。


「わかった」

この場所から離れれる方が良いかもしれへん。


全部リセットしたい。




「3つ目は…本社に異動になるから、来年から父さん長期出張が増えるかもしれへん。母さんと家をちゃんと守ってくれよ」


家族思いな父さんと母さん。



そんな父さんと母さんがすげー好きやけど、今はうまく言葉がでーへん。



「全部わかった。話はこれだけ?」

そう言って俺は部屋に戻った。



最悪な息子。




グレるわけでもなく、中途半端な反抗。

すげーダサい。


わかってるけど


今は無理だ。





俺は結局病院には行かなかった。
< 148 / 400 >

この作品をシェア

pagetop