放課後の片想い


そのノートには


【こんな素敵な音色、聴いたことない!!】

【来週も聴けるかな?】

【どうすれば、こんな美しい音が出せるの?】

【左手がすごく速い曲。右手はゆっくり?】

【テレビで聴いたことがある!!】


など、一言メモみたいなものがぎっしりと書かれていた。



【大好きな音色。今日も聴けて幸せです。ありがとうございます】



この言葉に俺は喜びを抑えきれず泣いてしまった。


勝手に見てごめん。

でも、ふと見えた文字から目が離せなくなって読み進めてしまった。



俺のピアノを聴いてくれてたって事やんな?


曲の特徴も一生懸命書いてくれている。



ありがとうって言いたい。

名前が知りたい。

この子を知りたい。


色んな感情が押し寄せる。




「…う…ん…」

起きるか!?



話したいのにいざ起きるかもと思ったら身体が反射的に逃げてしまった。

ノートを足元に戻して俺は音楽室に戻った。


あの子が起きるまで弾こう。



この日からあの子の為に弾きたいと思う時間になった。


名前も知らない女の子。
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