放課後の片想い
なんだかいい雰囲気だし、2人っきりにしてあげたいなぁ。


「桜ちゃん、私鈴原くんと約束あるし行くね♪後夜祭、楽しんでね!」


鈴原くんはきっとまだ片付けだろうけど、先に抜ける事にした。



桜ちゃんと加藤くん、付き合うかなぁ。
そうなったらいいなぁ。



時間はあっという間に夕方。
少しずつ暗くなってきている、


1年前のこの日、私は家で勉強していた。

それはちゃんと覚えている。

来たいと思わなかった。



ううん、それは嘘だな。

本当はほんの少し来たかった。
だけど、来てどうしたかったのか?
一緒にいてくれる友人もいない。
何がしたいのか?

そう思うと、来る勇気は到底なかった。



そんな私が今年はここにいる。

こんな奇跡みたいな事がずっと続いていることが、実はちょっと怖い。



ビュオッ

強い風が吹いた。


「寒…」

夕方になって冷えてきた。



ピトッ

頬に温かいものが当たった。


「鈴原くん!」

「お待たせ。ひとりで待ってたん?」


ホットミルクティーをくれた。


「ありがとう。うん、ほんの少しの時間だよ」

「そっか。待たせてごめんな」


やっと鈴原くんとゆっくり会えた。



私は無意識に鈴原くんの腕に自分の腕を絡ませた。


「日和?」


「…ん?わぁ!!いきなりごめんね!」


何してるんだ、私は!!!!

すぐに離れる。


「こらっ」

そう言って鈴原くんが私を抱きしめてくれた。


「なんで離れんの。嬉しかったのに」


ドキドキ

私の鼓動がうるさい。


「やっと抱きしめられた〜!!」


「…私もやっとこうして会えて嬉しい…」


「日和のドレス姿、可愛過ぎた」

「え!!あれは忘れて!!恥ずかしいー!!」

「無理。写真買った」

「えーー!!??」

「スピーチもかっこよかったよ。今も鮮明に覚えてる」


鈴原くん…。

愛しさが溢れてくる。


「鈴原くんの演奏してる姿もカッコ良過ぎたよ。絶対ファンクラブ出来ちゃうよ」

「ないない。練習期間なさ過ぎて焦ったわ」


お互い抱きしめ合いながら話す。
学校では会えてたのにね。
こうして触れ合えなかっただけで、寂しさは増え続けていた。

その寂しさを埋めるように、私は鈴原くんをぎゅっと抱きしめ続けた。




「…さっきさ、彗と話してた?」


「え?うん、ライブの事話してたよ」

歌詞の事は私から話すのは良くないよね。


「ふーん」


私を抱きしめる力が強くなる。


「他…見んなよ」


じっと私を見つめる瞳。

ドキドキが加速する。



「…見るわけないよ」


「いい子」


少し久しぶりのキスをした。
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