放課後の片想い
授業終わりの休み時間は転校生の成田さんへの質問時間に化した。


いつもは誰も来ない私の席周辺も、成田さんが隣にいるからか賑わっている。



私も何か質問したい。
でも、眠い。


いつも通り独りで過ごす休み時間。
でも少し違うとすれば


「前川、これ食べない?」

前より加藤くんが話しかけてきてくれるのが増えた。
前から優しかったけど、話す機会はここ最近特に増えた。

加藤くんは優しいから独りの私を心配しているのかもしれない。


「ありがとう。私の事気にしなくて大丈夫やから友達と過ごしてね」

そうお礼を言うと

「そんなんじゃないよ!」

珍しく加藤くんが大きな声を出した。


「え?」

周りもそんな加藤くんを見て少し不思議そう。


そんな時



「日和ー」

聞き覚えのある、低い声が聞こえた。


バッと後ろを振り向くと、扉の所に鈴原くん。



「鈴原くん!?」

「あっ日和いた!」

私の席に近づいてくる。


「鈴原くんだー!!」
「かっこいいー!!話したいー!!」


周りから黄色い声。

鈴原くんって人気あるんだ。。



「今、日和って呼んでなかった?」
「前川さんと鈴原くんってどんな関係?」


視線が痛い。
目立ちたくないのに。



「ごめん、数学の教科書貸して!忘れちゃって」

「…あ!はい!」


急いで机から教科書を出す。



「サンキュー!後で返しに来るわ!」

教室に戻ろうとする鈴原くんを女の子が止めた。


「鈴原くん。前川さんと付き合ってるの?」




ドクン



中学の頃の記憶が蘇る。

少し息が荒くなる。



違う。付き合ってなんかないよ。
誤解しないで。


「ちが‥」
「悠!」


隣の席の子が立ち上がる。

転校生の成田さんだ。



「え!桜!?なんでここにおるん!」

「引っ越してきてん!驚かそうとしたんやけど、まさかあんたから教室来るとは思わんかった」

「連絡してくれたらええのに」


そこにはすごく親しげな2人の時間が流れていた。
周りも誰も声をかけられないぐらい。

スラッとしたかっこいい鈴原くん。
同じくスラッとした美人な成田さん。

2人が並ぶと絵になる。

到底私なんか声もかけられない。



「じゃ、またあとでー」

彼は自分の教室に戻っていった。
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