放課後の片想い
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「おいっ!」


コイツ、歩くのはえーな。


走ってやっと追いついた。

 

「何?」

「ほんとにそれだけ?」

「だから何が?」



直感だったけど

絶対お礼だけのわけがないと思った。



「何企んでるかなと思って」


ジッと俺を見る荒木。



「ひどい言われようやなぁ」


下を向いてクスッと笑う。


「悠くんの言う通りやわ。周りの事をよく見てて色んな事にすぐ気がつく」


俺の事か?


「品定めにきてん。悠くんの彼女にふさわしいか」


「…は?お前何様なん?」

何言ってんだ、コイツ。



「あなたこそわかってんの?この世界、甘くないんやで。恋愛にうつつ抜かしてて夢に向かえるほど甘くないねん」


何も言い返せない。


「悠くんにピアノを再開させてくれたのはほんまにすごいと思う。むっちゃ嬉しかったし感謝してる」


「やけどさ」


「悠くんをほんまに応援出来るんかな?“応援”の意味、あの子ほんまにわかってるんかな?」


現実を突きつけられる。



「あの子、わかってへんやろ?そんなんじゃ無理。悠くんの邪魔になる」


「お前が決める事じゃないだろ!!」


「あたしなら、悠くんを精一杯サポート出来る」



これが本音か…!


「悠くんがどれほど練習で苦しんでるか、そう言う事は同じ音楽をしてる者同士しかわからへんねん」



何も言い返せない自分が悔しい。



「高校の交流会でしばらく関東(こっち)にいるから、また会いにくるね」


そう言って荒木は帰っていった。




なんなんだよ…!!!
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