放課後の片想い
楽しかった修学旅行もあっという間に帰りの時間。
昨日も夜中まで鈴原くんと話して部屋に戻ってからは、テンションが上がっていたせいか、なかなか眠れなかった。
「ふぁ……」
だからか、アクビが出て眠気が襲ってきた。
新幹線の席に座って、隣の足立くんが来る前に気付けば眠ってしまった。
「悠。俺とジャンケンしない?」
「なに急に」
「ジャーンケーン」
「は??」
「ポンッ!!」
俺はチョキを出して、悠はグーを出した。
「なんやねん、いきなり」
「勝った賞品として、席替えしてあげるねー」
「お前、さっきから何言ってんの?」
「俺からのコンクール頑張れの応援って事で♪」
そう言って、悠を日和の隣の席に案内した。
「彗、いいんか?」
「今回だけだよー。こんなサービスは♪」
「……サンキュ」
あーあ、俺ってほんとにバカ。
「このお人好し」
「桜、もっと優しい言葉で慰めてよ〜」
「足立はそれでいいの?」
悠と席替えした俺は、桜の隣になった。
「いいの」
「…足立、優しすぎ。いい奴過ぎてそれで止まっちゃうで」
なかなか核心ついてくるなぁ。
「さすが桜だね」
「私、どっちの応援もしないからね」
「わかってる」
今なら言えるかな。
「あのさぁ〜」
「ん?」
「桜、俺の事引くかもだけど」
「なんやねん」
「日和にキスしちゃった」
ガタッ!!
さすがの桜も席を一瞬立ち上がった。
「ほんま…?」
「うん、でも日和は寝てたから知らない」
桜はじっと俺を見てる。
「ほっぺとかじゃなくて、ほんとにキスした」
この話、悠にもしてない。
誰にも話してなかった。
どうして今話してるのか、自分でもよくわからない。
「最低だよな」
「…うん、最低」
だよな。
「私が言ってるのは、そんなに好きなのにお人好ししてる足立が最低って言ってるねん」
「え…?」
「そりゃさ、無防備な女の子にキスしたのは…最低だし卑怯やと思う…。だけど、私の知ってる足立は人の事をむっちゃ考える奴やから…その足立がそんな事しちゃうって言うのはそれぐらい好きって事やと思うねん」
桜。。
顔を真っ赤にして、一生懸命話してくれている。
クスッ
やっぱり俺のあの頃の気持ちは間違ってなんかなかったんだな。
「何がおかしいん!?」
「あっ、ごめん。俺、桜を好きになってほんとによかったなぁって思い返してた」
「はぁぁ!?今更何言うてんの!?」
「今は日和だけだよ」
「わかってるわ!何の修正やねん!」
俺、笑ってる。
桜にだから、話したくなったんだ。
ずっと誰にも話せなかった事。
それを話せたからか、心がすごく楽になった。
「どっちにしても、最低なんに変わりはないんやで」
「はい、桜さんの仰る通りです」
「あんたほんまにわかってんの!?」
友達って良いな。
俺には贅沢過ぎるぐらい、大切な仲間たちがそばにいてくれている。
「足立ー!成田ー!お前らうるさいぞー!!」
安田にキレられたのも良い思い出。
ちなみに日和は駅に着くまで爆睡で、悠が隣にいてくれたのに…と嘆いていた。