放課後の片想い
今日から3日間は午後から三者面談があるので、午前授業。
私は食堂でお母さんを待つ。
足立くんも一緒に。
今は桜ちゃんでその後が鈴原くん。
加藤くんは夕方だから一旦帰っている。
「俺までいてごめんな」
「なんでですか。謝る事じゃないし」
「日和はさ…進路決まったのか?」
進路か…
「まだ迷ってる事もあるんですが、英語を頑張りたいなと思ってて外大とか目指したいと思ってます」
「うわー!すげー!!日和絶対いけるよ!文化祭もすごかったし」
足立くんがそう笑顔で言ってくれて、すごく嬉しくて、そしてちょっぴり照れてしまう。
「足立くんは?」
「俺なぁ…なんだろうなぁ。まだ明確になくて」
「足立くん、歌詞作るのすごく上手だなって思いました。文章を書いたり考えたりは好きですか?」
「俺、本を読むのが好きでさ。だからか、文章とか書いたりとかも好きかも」
「素敵じゃないですか。まだ漠然としてても、その事を先生に伝えると良いと思います♪」
昨年の文化祭の足立くんが書いた歌詞、本当に素敵だったもん。
「やべー…」
「え?」
「俺、すげー嬉しい…」
顔が赤い足立くん。
「やっぱ日和好き」
「わわ!なんですか、急に!!」
「言いたくなった」
「バカバカ!足立くんのバカ」
「キスもしたい」
真剣な表情でこっちを見るから、どう返せばいいのか一瞬ためらってしまう。
「あだ……「日和ー!!!!」
桜ちゃんが三者面談を終えてやってきた。
助かったーーーー!!
「桜ちゃん、おかえり」
「なんやねん足立。むっちゃ睨んでるやん」
「もっと後に帰ってこいよ」
「はぁ!?」
桜ちゃんのおかげで、先程の雰囲気はなくなりいつものやり取り。
「で?どうだったんだよ、面談」
「とりあえず成績もっと頑張らなきゃだから塾行く事になった」
「そうなんだね」
「今までサボってたツケが回ってきたかな。でも頑張る!!」
今頃、鈴原くんの面談かな。
「足立、アイス買ってきて」
「は?自分で買ってこいよ」
「うるさい。行ってこい」
渋々桜ちゃんの命令に従い、席を離れる足立くん。
「おばさん来てた。今悠が面談してるわ」
「鈴原くんは夢が決まってるもんね。すごいよね」
「日和は?やっぱり英語?」
「うん、頑張りたいなと思って」
「すごいよ!!応援してるからね!!」
「ありがとう」
将来に向けて一歩ずつ進んでいく実感。
それは楽しみもあるけど、同時に恐怖もある。
前が見えない恐怖だと思う。
「加藤くんと話せそう?」
「…うん。加藤の面談が終わった後、ちょっと会う時間作ってもらってん」
「そっか。加藤くんなら絶対受け止めてくれるから、桜ちゃんの気持ちを素直に伝えてね」
1年後の自分が見えない恐怖。
1年後の周りも見えない恐怖。
だけど、確かなものにする為には前に進む努力をするしかないんだ。
勉強も、恋愛も。
口だけになっちゃうかもだけど、今の自分はそう思えるぐらい成長したんだなって感じる。
1年半ほど前の自分では見えていなかった今の景色。
ううん
見ようともしていなかった。
「前に進むって難しいね」
「ほんまに。予想が出来ひん」
「でも、だから楽しい事もあるよね」
自分の口からこんな言葉が出てくるようになるとは思ってもみなかった。
「日和、すごく前向きになったね」
「ほんと?なんだか恥ずかしい…」
「なんで?むっちゃ嬉しいし。そうでなくっちゃね」
今の私がいるのは間違いなく、みんなのおかげ。
「あっ、お母さんから連絡きた。そろそろ行ってくるね」
「うん、待ってるー。てか足立全然帰ってこうへんなぁ」
私は面談に向かった。
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「おっそいわ」
「お前と日和が話せるように考えてやったんだよ」
「気づいてたんや?」
「だいたいわかるわ。でもパシリにすんな」
「ガールズトークやねんからしゃあないやろ」
「足立は悠待ってるの?」
「それもあるけど、日和待ってる」
「一途やなぁ。相変わらず」
「だろ?そばにいれる限りはいたいんだよ。いつか離れるんだろうし…」
「足立……」