放課後の片想い
short story うるさい心臓 side 彗
おっそいなぁ〜悠も日和も。
桜も行っちゃったし、教室まで迎えに行くか。
教室に近づいていくと聞こえる声。
悠の声?
「なに?」
「今日この後、足立くんをウチに誘おうと思ってて…足立くん、親御さんずっと出張みたいだしこの三者面談も来れないって言ってたし…」
「もっもちろん友達としてだよ!?そもそも足立くんが嫌がるかもだけど」
「バターチキンカレー…おばさんにお願いしてた。日和、好きなん?」
「あっあれは…私も好きだしお母さんの得意料理だし。それに…」
「それに…?」
「足立くん、前に美味しいって食べてくれてたから…」
聞こえてきたのは悠と日和の声。
俺の事話してる…
日和……
心臓がドキドキうるさくて、そこにいる日和たちにバレてしまいそうに感じる。
俺は気付けば平然を装って2人の前に出ていた。
悠は俺に気を遣ったのか、バツが悪いのか帰っていった。
どっちにしても俺にはチャンス。
と…思ったけど……
日和の顔を見るとそんな余裕はなく、さっきの会話が頭の中でリピートされる。
友達としてでもいい。
俺の事を考えてくれてるだけで嬉しくて、ヤバイ。
十分すぎる。
我慢できない。
日和を抱きしめたい。
「10秒でいいからこうさせて」
また、俺のわがままだ。
でも…
あれ?
「離してって言わないんだ…?」
心の中で思った事をそのまま口にしてしまった。
こんな事だけで喜んでしまう俺はやっぱ重症だな。
「バターチキンカレーですよ」
そう言って可愛く笑う日和。
無自覚の可愛さ。
だからやっかいなんだ。
どれだけ夢中にさせれば気が済むの?
ちょっとは俺も日和の中でレベルアップしたって思っていいの?
でも、そんな事今はいっか。
こうして、きみの笑顔がそばで見れるなら本望だ。