放課後の片想い
逢いたい気持ち
「ちょっと寄り道していい?」
「はい。どこ行くんですか?」
「秘密〜♪」
足立くんとの帰り道。
お家でずっとひとり。
ご飯もひとり。
足立くんは平気って言っていたけど、やっぱり寂しいと思う。
私の勝手な独りよがりかもしれないけど。
鈴原くんもご両親、出張多いって言ってたなぁ。
ご飯食べれてるかな?
鈴原くんも誘えばよかったな…。
でも、その時にいつもよぎるのが練習の邪魔にならないか…。
だから、ためらってしまう。
「日和!」
「え!はい!?」
「呼んでるのに無反応だったから。どうかした?」
「ううん、なんでもないですよ」
「そっか」
グイッ
足立くんが手を繋いで私を引っ張る。
「あと少しで着くから。行こう」
少しかけ足で足立くんの言う場所へ向かう。
足立くんが繋いでくれる手はすごく温かい。
ふと足立くんの顔を見ると、耳が赤かった。
「足立くん、暑いですか?耳が赤いです。あれ?顔も…?」
繋いでいた手をグイッと足立くんの方へ引き寄せられた。
「わっ!!」
私はこけそうになり、思わず足立くんに抱きついてしまった。
「あっ、ごめんなさい!」
すぐ離れようとしたら、ぎゅっと抱きしめられ離れられなくなった。
「バカ日和。鈍感日和」
静かな空間に蝉の鳴き声が静かに響く。
「日和と…手が繋げたから照れた…だけだよ…」
少し弱々しく聞こえる声。
私も思わず照れてしまう。
「いい加減、俺の事わかって」
目が逸らせない。
ドクンドクン…
足立くんはパッと離れて
「着いたよ」
と言った。
「わぁ…!!」
着いた場所は少し丘になっている所で、街を一望できる場所だった。
「こんな所知らなかった…」
「だろー?結構穴場でさ♪俺ん家の裏手になるんだけど」
「そうなんですね」
すごく景色が綺麗。
夏の長い陽が、少しずつ欠けていく夕方。
「俺さ、昔からひとりの時間多くてさ。親も出張はなくても共働きだし、俺こんな性格だから友達も出来なくてさ」
「足立くんはすごく性格いいと思います」
「ほんと?」
「はい。意地悪だし、すぐ冗談言うし、何が本音かわからない時多いし何考えてるかわからない時もあるけど」
「………だめじゃん」
「それ以上に優しくて人の事ちゃんと見てて、大切にしてくれる温かい人です」
そう、足立くんはそういう人。
足立くんがフイッと下を向く。
「バカ…褒めすぎ」
「ほんとの事ですよ?」
「…サンキュ」
私の頭をポンポンと撫でてくれる。
「ひとりの時はよくここに来てた。この景色見たら、また明日も頑張ろうって思えてさ」
私はお母さんやひなちゃんがそばにいてくれる日々が当たり前だった。
お父さんは単身赴任でなかなか会えないけど、その分お母さんたちが一緒にいてくれたから寂しさはなかった。
足立くんはずっと寂しさを感じていたの?
それを誰にも言わずに黙っていたの?
「悠に出会った時、なんかピーンときたんだよね」
「なにをですか?」
「友達になりたいって」
「素敵な直感ですね」
きっと鈴原くんも同じ気持ちだと思う。