放課後の片想い

何秒経ったんだろう。

そっと唇が離れる。
私の目からは涙がポロッと流れた。


「ごめん…ほんとにごめん……」


足立くんは私をぎゅっと抱きしめた。


不思議と怒りはなくて、ただ手や足が震えてた。




「俺の事、嫌いになってー…」

バタンッ!!!


「足立くん!!??」


次の瞬間、足立くんがその場に倒れた。

おでこを触るとひどい熱。
ぶり返したんだ!!


意識が朦朧とする足立くんをなんとか起こして一緒にベッドに行き、寝かせる。


おでこに冷却シートを貼って、氷枕で冷やす。


とにかく無我夢中で看病をした。



私がベッドを占領しちゃったからだ。
結局私が迷惑かけてる。



「ごめんね…」



息が荒かったのがだんだんとおさまっていく。
熱が下がってきたのかな。



さっきの事を思い出す。


足立くんの気持ちを知っているのに…
私が傷つけてしまったんだ。

だから、足立くんにあんな顔をさせてしまった。


さっきの、あの切なくて泣きそうな顔。


優しく微笑んでるのに、泣きそうな顔だった。

私がそんな顔をさせてるんだ。



ぎゅっ…

自分の手を握りしめた。




帰った方がいいよね。



「んん……」

少し苦しそうな足立くん。


放っておけないよ。







カタンー…


俺、また寝てたのか…


って…!!

ガバッ!!!!


朝方の事を思い出し、飛び起きた。


「日和!?」


俺、最低な事をした。


日和はいない。

帰ったか…


カタンッ

リビングから音がする。
まさか



「あっ目が覚めましたか?体調はどうですか?」

「え…なんで?」

「なにがですか?」

「なんでいるの…?」

「わっ!足立くん、失礼ですよ」


目の前の景色は現実?




「あんな最低な事したんだよ?」

「………」

「しかもその後ぶっ倒れるし」

「それはビックリしました」



俺、苦しいんだ


だから、もういっそ嫌われた方が楽だと思った。



「嫌ってよ…」


あぁ、ダサ過ぎる。

どこまでも日和に任せて、自分で決めない。


潔く失恋しろよ、俺。

何度もフラれてるだろ。



「日和、ほんとにごめんな。俺もうー…」

「ビックリしたし、正直怖かったです」


ドクンッ

やっと発した日和の言葉に早速動揺する。


いや、もう覚悟は出来てる。
何を言われたってちゃんと受け止める。



「でも…熱も上がってたし朦朧としてたんですよね?」


違う。
それは関係ない。


「違うよ。俺は自分のワガママで…」

「私が足立くんに甘えてました。悲しませたり苦しめたり…してましたよね…」

「そんな事ない」

「ごめんなさい」


ドクンッ!!

今までより強く鼓動が鳴った。


あぁ、完全にフラれる。


いいんだ、これを願ってたんだから。

わかってたんだから。



「足立くん」

「ん?」


不思議と今はちょっと穏やかな気持ち。

この苦しい片想いから解放されるのかなってちょっと思ってしまってる自分がいるからだな。



「私、最近わからなくなるんです。私まで嬉しくなるぐらいの笑顔で笑ってくれたと思ったら、すごく悲しそうな顔をするし、だけど本音はなかなか言ってくれないし…」


え…?


「足立くんって何を考えているのかわかりません。自分の気持ちは飲み込んじゃうんだもん。他にもー…」


ねぇ、日和。
今自分が何を言っているかわかってる?


「キス…して嫌いになってって…そんなの卑怯です。私の気持ちは…」


ダメだよ、日和。
そんな事言ってたら


ぎゅっ

「また俺に勘違いさせる気?やっと…諦められると思ったのに」


日和はズルいよ。



「足立くんが悲しい顔をすると、私まで悲しくなるんです。足立くんに笑っていて欲しいんです」


ねぇ、それは勘違いしていいの?
俺はバカだから勘違いするよ?



「日和、それ以上話すと俺、勘違いするよ?」


日和の頬に触れる。


きゅっ

俺の手に日和が手を添える。



「足立くんが笑ってくれるなら…勘違いして欲しいです」


プツンッーー

自分の中で理性が切れたのがわかった。



「キス…していい?」


日和は少し俯きながら


「…はい」

顔を赤くしてそう答えた。


「ラストチャンスだよ?ほんとにいいの?」


「して欲しいです」

上目遣いでそう言われたら、もう我慢出来ない。


俺は日和にキスをした。

日和にキスをしたのは3回目だけど、初めてのような感覚だった。


気持ちが通じるってこういう感覚なんだろうか。
< 355 / 400 >

この作品をシェア

pagetop