放課後の片想い
悠が取ってくれていたホテルにあるレストランで夜ご飯食べて、温泉入って、ホテルにあるゲーセンで遊んで……
「って!!むっちゃ楽しんでもてるやん!!」
「おっ彗もとうとう関西弁デビューか?」
思わず関西弁が出てしまった。
「おい!京都に来た理由、そろそろちゃんと聞かせろよ」
「え〜、ほんまに来たかったからやで」
コイツは…
「悠、ちゃんと話せ」
「テラス行く?暑いしやめとくか」
「…いや、行こう。夜風当たりたい」
思ったより涼しくて、夜風が気持ちいい。
「ごめん。俺が聞く勇気がなかなかでーへんくてさ」
わかってるんだよな、悠は。
俺もちゃんと話さなきゃいけない。
「彗から話せよ。もう聞けるから」
「いや、悠から話して」
いつも俺から。
俺の気持ちを先に聞いて、悠は自分の気持ちを隠すんだ。
だから、今度こそそうはさせない。
ちゃんと話させる。
「別に俺、話す事ないし」
「それでも話して」
暑いわけじゃないのに、じんわり手汗をかく。
俺、なんか…緊張してるな。
「そうやなぁ〜。この旅行さ、日和と来るつもりやったんよ」
「うん」
「先月の修学旅行で誘った。コンクールで予選受かったら一緒に行ってって。日和はオッケーしてくれた」
ズキッ…
なんだ俺、なんでショック受けてるんだ。。
「今日の事はちゃんと誘ったのか?」
返事が少し怖い。
「安心しろよ。誘ってない。コンクール以来連絡取ってない。もっと言えば、夏休み入ってからコンクール前までも一回も連絡取ってへんよ」
そう…なのか……
「でも、日和と行く為に予約したんじゃ……」
「ん〜、なんか矛盾してるかもやねんけど……一緒にいけるとは思ってなかったんだよな。はじめから」
「は…?なんで…!」
「うまく言えへんけど、俺が予約したって誘ったら断ってたと思う。日和の目にはお前が映ってるんやで」
悠の言葉にぎゅっと拳を握った。
「俺はちゃんと話したでー。彗の番」
「…日和と付き合った」
「へー」
「デートもした」
「うん」
「今日だって連絡取ってる」
「仲良い事で」
「絶対譲らないから」
少しの間、沈黙が続く。
「ありがと…な」
やっと口を開いたかと思ったら、、、
なんだよ、それ
俺はカッとなって悠の浴衣の襟元を掴んだ。
「カッコつけんなよ!お前にお礼言われるような事何もしてねーし!なんだよそれ!!」
悠らしくて、だから余計に腹が立った。
「ちょっとぐらいカッコつけたいやん。俺、一応負けてるんやし」
それでもふざけるように笑う。
「お前…ほんとに本心出さねーな。ここ最近は日和にも素直にヤキモチとか出すようになったと思ってたけど」
俺は悠の浴衣から手を離す。
「日和にも何考えてるかわからへんって言われた事あるわ」
「マジ?俺もなんだけど」
2人で顔を見合わせて、思わず笑う。
「似た者同士やん」
「日和可哀想だな」
お互い、謝る事じゃねーよな。
「大切にするから」
「ふーん」
「お前より絶対俺が幸せに出来る」
悠は、あははと声を出して笑って
「別れさせてやるよ。負けましたって言わせてやる」
いつもの強気な顔に戻った。
「そうこなくちゃな」
親友と同じ人を好きになる。
こんな事ってなかなかの確率な気がする。
でも、俺らはそうなった。
部屋に戻ってお互いベッドに入る。
「俺てっきりベッド1つだと思ってた」
「は!?なんでお前と同じベッドで寝なあかんねん」
「ちょっぴり楽しみにしてたのにー♡」
「消えろ」
いつものやり取り。
安心する。
「悠〜」
「あ?なんやねん、寝たいんやけど」
「ありがとう。誘ってくれて」
純粋に嬉しかった。
それに楽しかった。
「…俺さ、彗と来たかったんはほんまやで。予約する時はお前と来るつもりやったし」
「悠…大好き♡♡」
「お前ほんまウザイな…寝ろ」
「まぁ、住む国が離れたっていつでも会えるよ。俺が遊びに行くから」
「………」
もう、寝たかな?
俺もそろそろ寝るか…
「…そん時は一緒のベッドで我慢してやるよ」
素直じゃない悠。
俺はそんな不器用で、でも頑張りやな悠が大好きなんだ。
「もうちょっとトランプとかしねー?」
「お前、ほんまに早く寝ろよ」
友情って、特別大切だと感じた。
俺はお前もすげー大切だよ。