放課後の片想い

あなたと過ごす時間


2学期が始まった。



この前、足立くんと鈴原くんは2人で京都旅行に行っていた。


足立くんにメッセージをもらって知った。




修学旅行の時、約束した京都。



足立くんと付き合ったし、ちゃんと断るつもりだった。


だけど、連絡すらなかった事に勝手にショックを受けている私。




私、、、性格ヤバすぎる気がする。




「何頭振ってんの?」

「わっ!!足立くん!!」


ひとりで考えてたら、無意識に頭を振っていたらしい。



「あはは!日和、怖い顔してるー」

「そっそんな顔してないです!!」


ひとりで悩んで、相当ひどい顔をしていたようだ。。
恥ずかしい。。。




「おはよう」


そんな時に聞こえた声。


「お…おはよう」

鈴原くんだ。



鈴原くんはニコッと笑って席に向かった。



コンクールで見た以来。

声を聞いたのは終業式以来。



少し…痩せた?



無意識に目で追ってしまう。



「なぁ、日和!」

「はっはい!!」


「始業式終わったら図書館行かない?」

「うん。行きたいです」

「決まりね♪」



私たちのやり取りを鈴原くんが優しく見守ってくれていたなんて、私は知る由もない。





始業式が終わり帰宅時間。


「ごめん、なんか安田に呼ばれたから職員室行ってくるわ」

「待ってますね」


足立くんは職員室に向かった。



桜ちゃんたちやクラスメイトも帰って、ひとり静かな教室で足立くんを待つ。


ひとりきりの教室。
なんだか懐かしい。


中学や高一の頃、よくひとりでいたなぁ。
まぁ、それが好きだったりもあるんだけど。




ガラッーー


「足立くん?」

扉の方を見ると


「日和?」


鈴原くんだった。





あれ、私なに緊張してるの。

ドキドキしてるの。


窓際にいる私の方へ近づいてくる。



「彗待ってるん?」

「う…うん」


鈴原くんは机にかけていた鞄を取った。


そっそっか!
窓際の席だもんね!

私ってば、、何を勘違い…



「じゃーね」


帰っちゃう。



「あっあの!!」


「なに?」


「コンクール…ほんとに感動しました‼︎鈴原くんの音を聴いていたら…涙出てきて……物語が目に見えるみたいな不思議な感覚だったの」


鈴原くんに伝えたかった。



「物語?」


「うん。オンディーヌ…色んな葛藤から救い出されて幸せになってほしいって思ったよ」


私なんかが言うのはおこがましいけど。



「調べたん?」


「鈴原くんが曲名教えてくれた時に。どんな曲か知っておきたくて」


「そっか」


「私なんかの勝手な考えでごめんね。厚かましいよね。だけど、すごくそう感じたの」


オンディーヌは決して、水に引きづりこみたかったわけじゃない。


王子様を騙したかったわけじゃない。



「オンディーヌは…ただ純粋に王子様が大好きだったんだと思う」



気付けば鈴原くんが近づいていて、目の前にいた。




「むっちゃ嬉しい…。俺と同じ考えやねんけど」


「え…」

「俺の考えや気持ちが伝わってたのが嬉しい。それが日和に伝わってたのが一番」


鈴原くんと同じ考えだったの。


なんだか私まですごく嬉しい。




「なぁ日和。俺、なんであの曲にしたと思う?」


それ…知りたかった事。


「えっと…それはわからない……」



「優柔不断な“王子様”…俺みたいやん?自分よがりで、ちゃんと決断もせずただただ自己中」


「え…?」


「そしてオンディーヌを悩ませて……それでも、自分を選んでもらえるよう懇願する」



何言って…



「情けない俺と同じやと思った」



「鈴原くん…!」


「でも、最後だけちょっと日和とちゃうかな」


最後?



「最後のところ…あれはオンディーヌが水に引きずりこむんじゃないで」



じゃあ一体どんな



「王子様(オレ)が暗い冷たい場所へ堕ちていくねん」



「何言って…!!」

「ねっ俺にピッタリやろ」



そんな風に聴こえなかった!!
私が感じたのはーー…!!!


「じゃーね、日和。また明日♪」



鈴原くんは帰っていった。

扉が閉まる音がこんなにも悲しく感じるのはどうしてなの。
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