放課後の片想い


4階奥にある空き教室に連れて来られた。


「なんやねん!」

「あんたさぁ、男のくせにほんまなよなよしてキモ過ぎるんやけど」

「あぁ!?なんでそんなんいきなり言われなあかんねん」



いきなり喧嘩腰の桜。



「日和の事あからさまに避けてるよな?」


「別に避けてへんわ」


相変わらず鋭いと言うか、なんと言うか


「逃げんの?今の状況から」


俺の気も知らねーで…


「アイツは…彗を選んだんやから、それでええやん。これ以上俺が関わる事はないやろ」


「悠はそれでいいの!?」


「ええねん。もう決めたんやから」


「なんでよ!足掻いたらいいやん!」


「そんな格好悪い事…できひんわ」


「…あっそ」



なんやねん。


「足掻こうと思ったけど、日和は彗を選んだ。これ以上足掻いたら、ただダサいだけやろ」


「はぁー…あんたはほんま自己中やな」



わかってるよ。
結局俺は自己中で口だけ、そのくせ逃げようとするんやから最悪。



「俺ってさ…こんな格好悪かってんな」


改めて自覚した。



「なんでうまく出来ひんねやろ。ただ優しくしたいだけやのに、泣かせてまう。日和には、俺といるとピアノの事とか俺の事ばっか気にさせて、何もアイツにしてやれてない」


あー、自分で言ってて情けねー。



「夏休みもさ、連絡取ろうとしたよ。何度も。でも出来ひんかった。日和から来るのを待ってた…ってのもあるんかな…」


ずっと黙って聞いている桜。


「結局コンクール前に連絡してもたけど」


あかん、自分で自分に笑ける。



「な?勇気も自信もない、超ダサい男やねん」



だから、日和が彗を選んだのは納得やしちょっと安心もした。

彗以外の男やったらムカついてしゃーなかったけど、彗なら……負けるわって思える。



「悠さぁ、カッコつけすぎちゃう?もっとダサくなりいよ。てか、あんたの言うダサいの意味がよくわからんけど、勝手にひとりでカッコつけて、ひとりでショック受けてるやん」


なかなかキツイ一言。。



「桜…もうちょっと言葉選べよ……」


「あんた顔はまぁ…ええ方かもしれへんけど、ほんま中身は弱いなぁ〜。相変わらずやな」


「もううるさいわ。教室戻るで」


「あんな?日和はそんな悠も含めて好きやったんやで?わかってる?日和の事も足立の事もどっちも大事なんわかるけど、はっきりしいや」


何が言いたいねん


いや、、桜の言いたい事はわかってる。



「いいやん。ダサかったって、自己中やったって、多少メンヘラ?気味やったって、何より…ピアノが大事やったって。真剣に向き合ってる悠が日和は好きなんよ」


「俺…メンヘラ?」


「え、自覚ないんや。こわっ」


あかん、普通にショック。



「そんな悠もみんな好きなんよ。今のあんたの方が相当ダサいで」


「さっきから好き勝手ばっか言いやがって…」


「どんな答えが返ってくるかわからへんけど、後悔しいひんようにね。あっという間に過ぎるで、一緒におれる時間は」



あー…ほんまやな。


「桜ムカつく」


「あのさ、お礼のひと言も言えへんの?受験前の授業サボってあんたに時間使ったんやで」


「頼んでへん」

「うーわ、ほんま最低」


「俺らしいやろ?」



ありがとう、桜。


俺は、仲間に助けてもらってばかり。

全然ひとりで答えを見つけられない。


でも、それでいいんやな。


頼っていいんやな。


こんな情けない姿、見せてもいいんやな。



「それでいいんちゃう?今度、アイスおごって♡」


「クレープもつけたるわ」


「悠が優しくて…怖い……」
< 370 / 400 >

この作品をシェア

pagetop