放課後の片想い
授業が終わり休み時間になると2人は戻ってきた。
そこに足立くんが向かう。
「お腹の調子はどうですか?おふたりさん」
「絶好調やわ。おかげさまで」
「ふーん。本調子になったならよかった♪」
桜ちゃんは私の元にやってきた。
「世話が焼けるね〜」
「え?」
「まぁそれが嬉しかったりもするんやけどね♡いつまでも世話が焼けて欲しい的な?」
「桜ちゃん?」
ポンッ
桜ちゃんは私の頭に手を乗せた。
「日和も素直になりや。周りなんか気にしんと」
私は桜ちゃんの言葉の意味が少しわからなかった。
………いや
本当はわかるのに、わかる事から逃げようとしただけなのかもしれない。
放課後。
「日和ごめん。来月の推薦の事で安田と話あるねんけど何時なるかわからへんし先帰ってて」
「待ってますよ?」
「ありがとう。でもたぶん遅くなるし、よかったら先帰ってて?」
「わかりました。頑張ってね」
わがまま言って待ってても、気を遣わせちゃうかもしれないよね。
今日はお母さん遅くなるし、何かサッと作って食べよう。
スーパーにでも寄ろうかな。
「買い過ぎた…重い……」
お肉とかセールしてたから、ついつい買ってしまった。
冷凍してたら、長持ちするしね。
「あれ?日和?」
間違えるわけがない。
「鈴原くん」
目の前に鈴原くんがいた。
「むっちゃ重そうやん。持つわ」
パッと荷物を持ってくれた。
「大丈夫だよ!ごめんね!」
「いいからいいから。てか、むっちゃ買ってるな」
「安売りしてからつい」
「それは大事やな」
あれ、普通に話せてる。。
「おばさんは一緒じゃないん?」
「今日仕事で遅くなるの」
「そっか」
嘘みたい。
始業式以来だ、こんな風に話すの。
「すっ…鈴原くんはこんな時間にどうしたの?」
「あー、俺春あたりから英会話行ってるねん。留学の為に。今はその帰り」
「そうなんだ!」
知らなかった…。
なんだか胸が少しチクッとしたけど、気づかないフリをした。
「桜、来月の入試いけるんかなぁ」
「塾もたくさん行って頑張ってるし絶対大丈夫だよ」
「ほんまやな。応援しよな」
「うん」
嬉しい。
こんな風に話せて。
ドサッ
玄関まで入って荷物を家の中に置いてくれた。
「鈴原くん、ほんとにありがとう。もしよかったら…」
私は去年の夏の終業式を思い出した。
「なっなんでもないよ!練習あるのに邪魔しちゃってごめんね」
お母さんいないのに、また簡単にお家誘っちゃダメだよね。
しかも、足立くんと付き合ってるんだから。
「別に何も邪魔してへんよ」
「それならよかった!!」
「「………………」」
謎の無言が続く。
「あっ…「あのね!!」
ちゃんと言おう。
「もう知ってると思うけど…足立くんと付き合ってるの」
「…うん」
「夏休みから付き合ってます」
「知ってたよ」
「そ…だよね」
トンッ
壁に追いやられて、目の前には鈴原くん。
逃げ場がない。
「彗が好きなん?」
なに、このシチュエーション。
「好きだよ。だから付き合ってもらったの」
「…そっか」
言えた。
ちゃんと言えた。
「足立くんが大好きで大切です」
絶対目を逸らさない。
胸を張って言うんだ。
「それも知ってる」
鈴原くんは表情を変えず、じっと私を見ている。
「ねぇ日和、日和の目には俺はもう映ってないの?」
ドクンッ
「なに…言って…」
「1ミリでいいから俺を見てよ」
なんで、今更……
「なんで…今更そんな事言うの?なんで…」
なぜか、目に涙が溢れてきた。
「俺、ほんま日和を泣かせてばっかやな」
鈴原くんは私の涙を指で拭う。
「触らないで…」
「俺やっぱカッコつけてた。日和が幸せになれるなら見守ろうって。俺じゃ幸せに出来ないって」
鈴原くんは私の言葉を無視して、頬に触れる。
「でもほんまはな、日和からの連絡をずっと待ってる小さいしょーもない男なんよ」
何も言葉が出てこない。
「今すぐにでも彗と別れさせて、俺と一緒になってほしい。そうさせたい。俺しか見れないようにしたい」
なんでドキドキしてるの、私。
「な?ヤベーぐらい自己中でどうしようない男やろ?でも、これが俺。そんな俺を日和には知って欲しかった」
鈴原くんの体温が頬から伝わる。
ドキドキしちゃダメだ、私。
「私は足立くんが好きだから」
鈴原くんの目をしっかり見て伝えた。
鈴原くんはフッと笑った。
「やっぱり日和やな。俺が大好きな日和」
ズル過ぎるよ
「す…鈴原くんはズルい…ズル過ぎるよ」
「うん、もっと言って。我慢せず俺を責めて」
「な…んでそんな事……」
また涙が溢れてきた。
どうして涙が溢れるのか、わからない。
悲しいの?
辛いの?
ううん、そんなんじゃない。
「こんな最低な俺…もっと罵って……罵倒してよ」
「鈴原くん…」
「ん?」
「鈴原くんは、暗い冷たい所に堕ちたんじゃないよ…?鈴原くんの音色は明るい場所に辿り着いた、キラキラした音だったよ」
「日和…ごめん、今はこうさせて」
鈴原くんに抱きしめられた。
足立くんへすごい罪悪感があるのに、振り解けない私はどこまでも最低だ。