放課後の片想い

どれぐらい時間が経ったんだろう。


きっとほんの数十秒だと思う。



「ごめん…」

スッと私から離れて鈴原くんは帰ろうとした。


「さっき俺が言った事忘れ…」



バタンッ!!!


「鈴原くん!?」


鈴原くんがその場に倒れてしまった。



「えっ!?鈴原くん!!大丈夫!?」


「あっごめん…ちょっ……目眩しただけやから」


「ちょっと休んでいって!」

「いや…帰る」

「だめ!!早く来て!!」


嫌がる鈴原くんを無理矢理リビングに連れてきて、ソファに寝転んでもらった。


「病院行く!?救急車呼ぶね!」


私はプチパニック。


「日和落ち着いて…大丈夫やから」


顔色が悪い。大丈夫なわけないよ。


「最近寝不足やったから…そのせいやと思う」



鈴原くん

練習や勉強で慣れてないのかな。



「何か飲めるかな?」

「水ちょうだい」


鈴原くんは水をぐっと飲んで、立ち上がろうとした。


「ダメだよ!まだ横になってなくちゃ!」

「大丈夫やから」


「しつこい!あかん!!!」


あっ最近うつってきた関西弁が出ちゃった。



クスッ
「日和の関西弁、可愛過ぎるねんけど。しつこいとか、怒れるんやね」


私が怒ってるって言いながら、笑ってる鈴原くん。


「バカにしてる…」


「してない。可愛いって思っただけ」


またそんな事を言う。



「とりあえず、ちょっと寝て?そしたら帰っていいから」


「…わかった」


少しすると、鈴原くんは眠っていた。
絶対疲れがたまってるんだよ。



あれ?

私、鈴原くんの寝顔見るの初めてじゃない?



こんなに一緒にいて、初めてなんだ。


まだまだ知らない鈴原くんがたくさん。




私はそっとブランケットをかけて、夜ご飯の支度に向かった。





洗い物やご飯の支度をしながら、ふとソファを見ると鈴原くんが寝ている。


なんだか不思議な感覚。




ガチャンッ


「ただいまー」

お母さんが帰ってきた。


「あれ?お母さん早かったね」

「残業思ったよりすぐ終わってね…ってえ!?」


鈴原くんを見て驚いているお母さん。
そりゃそうだよね。



「鈴原くん、さっき倒れちゃって。寝不足みたいなんだけど」

「そうなの!?貧血かしら?ゆっくりしていってもらいましょ」

「うん。ありがとう」



一応鈴原くんの分のご飯も作った。
ひとまずは、鈴原くんが起きるまでそっとしておいてあげよう。





——————————

「ん…」


「目覚めた??」


「ひよ…り…?」

うっすら開けた目から見えたのは日和の顔。
起きてすぐ日和に会えるとか、俺まだ夢見てんのかな。

………って!!!
ちゃう!!!!


ガバッ!!!!!!
俺は急いで起き上がった。


「ダメだよ、急に起き上がっちゃ!気分はどう?」


「俺、寝ちゃってた!?ほんまごめん」

「なんで謝るの?全然だよ」


なんかむっちゃいい匂いがする。



「鈴原くん、気分はどう?」

この声は…


「すっすみません!!俺寝てしまって…すぐ帰ります!!」


「どうして?ゆっくりしていってね。貧血だと思うけど、疲れがたまってるんじゃない?」

「いえ。俺の体調管理不足です。ご迷惑おかけしました」


おばさん帰ってきてる。
久々に会って迷惑かけてるよ、俺。



「あのね!お粥とか悩んだんだけど…オムライス作ったの。よかったら食べていかない?」


「え……」


「ちょうど今出来たのよー♪日和の手作りだし、よかったら食べていってあげて♡」


オムライス。
俺の好きなやつやから、作ってくれたんかな?


やべ
それだけでこんな嬉しい。


「あっでも無理しないでね!気分悪かったら違うもの作るよ」


あーもう
おばさんの前やのに抱きしめたくなる。


こんなの反則やんな?

好きが増えていってしまう。



「食いたい」

「ほんと!?よかったー!!」


ほら、そうやって嬉しそうに可愛く笑う。

その笑顔、彗にも見せてるのか?
無意識にそんな可愛い顔してんの?


相変わらず、すげー独占欲。



俺はテーブルに向かった。


「いただきます」

日和のオムライス。
いつぶりやろ。



「うめー!」


「えへへ、よかった♪」


これだけでも充分幸せ。


俺はどうしたら、全てを守れる人になれるんやろう。



———————————


「ご馳走様でした」

「全部食べてくれてありがとう」



「鈴原くん、そういえばお家の事も考えずご飯に誘ってしまってよかったのかしら?用意してくれてたんじゃない?」



本当だ!!
私も全然考えてなかった。。


「大丈夫です。両親、出張でいないですから。まぁ、父親は基本単身赴任ですけど」


「そうなの?鈴原くんもひとり!?」


「“も”??」

「あっえっと、足立くんもよくご両親出張でいなくて家でひとりだから」


「あー、そうやな。俺と彗はなんか色々似てるんよ」


「ご両親いなくてちゃんと食事取ってる?練習の詰め込みであんまり寝てないんじゃない?また倒れてしまうわよ」


お母さんも心配してる。



「ありがとうございます。ここ最近寝不足やったんで気をつけます。食事はまぁ…適当に取ってます」



それじゃだめだよ。


「俺が留学するから…親にはさらに負担かけちゃうんですよね。俺の夢の為に仕事むっちゃ頑張ってくれてるし…やから俺は必ずそれに応えたいんです」


すごい。。
まっすぐ夢を語る鈴原くんを、改めて尊敬した。


なんだか私が恥ずかしくなる。。
< 372 / 400 >

この作品をシェア

pagetop