放課後の片想い

トライアングル


「とりあえず、これ飲みなさい」


温かいホットティーを入れてくれた。
そして、目を冷やす為のアイスノンもくれた。



「お母さんでよかったら話して?ちょっとは楽になるんじゃない?」



涙はなんとか止まった。



「まぁ無理して話さなくてもいいんだけどね」




「鈴原くん…コンクール2位取ったよ」


「そうなの!?凄いわねぇ!!」

お母さんもすごく喜んでくれている。




「…あのね、鈴原くんはずっと夢に向かって走り続けてるの。その姿がほんとにカッコいいなって思うほど」

「うん」


「そんな鈴原くんを応援したいの、これからも。それに…なにより、こんな私と一緒にいてくれる足立くんを大切にしたいの。傷つけたくないの」


我ながら、説明というか話が下手だなぁ……と思う。




「なのに。。私、さっき足立くんの目の前で鈴原くんに、行かないでって言っちゃったの……」


足立くん、どんな表情してたんだろう。。

私、どんなけ足立くんを傷つけたら気がすむの。



「鈴原くん…留学したら日本に帰ってくるつもりないって言って…私、もう会えないって思ったら耐えられなくて……」


私は何様なんだ。




「なるほどね…」


こんな話、お母さんにいきなり話しちゃって…


「困らせてごめんね」



「日和とさ、こんな話するの初めてよね。…と言うか、日和の素直な気持ちをこんな風に聞くこと自体が初めてな気がする」



そうかもしれない。



「中学の頃も…こうしてお母さんがもっと踏み込んで聞けたらよかったのよね…。なのに日和に我慢させてばかりだった」


「え!?何も我慢とかしてないよ!」


「あなたの素直な気持ちを聞こうとしなかった。お母さん、弱かったのよ」


お母さん……


「本当にごめんなさい。もう絶対何からも逃げないから…だから何でも話して。家族だからね」



わぁ…なんだろ、この気持ち


涙が出る。

さっきやっと止まったところなのに。




「ありがとう…お母さん」


「お母さん、日和が素直な気持ちを話してくれて嬉しいの。ごめんね、日和は辛い気持ちなのに喜んじゃって」


お母さんも泣いている。



「きっと…鈴原くんや足立くんも、少しお母さんと気持ちが似てるんじゃないかな?」


「え?」


「足立くんは…もちろんショックを受けていると思う。それに対しては、日和がきちんと責任を取らなきゃだめよ。逃げちゃだめ」


うん、そうだよね。


「だけど、ほんの少しかもだけど日和の素直な気持ちが聞けてよかったって思ってる所もある気がするの」



そう…なのかな。


「まぁ、都合よく解釈し過ぎかもだけどね」



逃げちゃ…だめ



「鈴原くん、覚悟を決めたんでしょうね」



「覚悟…?」



「好きな人たちの元から離れる覚悟」



私には到底出来ない覚悟だ。




「日和はどうしたいの?自分の気持ちに正直にならないと、周りの大切な人たちをもっと傷つけてしまうわよ」




ドクンッーー



「綺麗事じゃだめなんだよね…」


「世の中、綺麗事なんか通じない事がほとんどよ。人生1回なんだから!素直になりなさい。もし、その結果がどんな風になったって受け止めれるわ」



お母さんの言葉が心に響く。



「例えが良くないかもしれないけど…【しない後悔】より【してからの後悔】の方が良くない?何もチャレンジせず、動かず後から後悔するのが1番心に重く残るのよ」



してからの後悔



「よく考えてみて」


「うん。ありがとう、お母さん」



こんな風に話せて、すごく嬉しい。


「甘いものでも食べましょうか」



「うん」



ガタッ

「ちょっとだけ待ってて!」



私は玄関のドアを開けた。




「…いるわけないよね」



なにやってんだろ、私。


もういるわけないのに


もし、いてくれていたら何を言おうとしていたの?



誰に何を言いたかったの?
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