放課後の片想い

「前川さん、ちゃんと寝てる?睡眠不足が原因で倒れたんだと思うわ」


保健室の先生が奥からやってきた。


「ちょっと勉強であまり寝てなかったかもしれません」

咄嗟に出た嘘。
なんか最近嘘ついてばかりだな。


「勉強も大事だけど、ちゃんと体を労りなさい」

「はい。ありがとうございます」



どうやってここまで来たんだろう。


「桜ちゃん、ここまでどうやって…」

「足立が運んでくれたんやで。日和が倒れた後血相変えてすぐこっち来たもん」


足立くんが…
気を失う前に聞こえた声は夢じゃなかったんだ。



「さっきまでアイツもいたんやけど、先に戻るって教室戻っていったわ」

「そっか」


「あんたら、なんかあったやろ?」


どきーーんっ


「べっべつに!」

「それが原因で寝不足とかちゃうん?」


さすが桜ちゃん!!!



「何もないよ!勉強してただけだよ」


ぎゅっ

優しく私の手を握ってくれた桜ちゃん。



「話したくなったらいつでも話してな?」


桜ちゃんの手の温かさ、そして心の温かさが伝わってきて涙腺が緩む。



すごくすごく嬉しい。


だけど、今回は自分で決めなきゃって思うんだ。



「桜ちゃん、いつもありがとう」


ちゃんと自分で答えが出せたら聞いて欲しい。




「日和、立てる?」

「うん、大丈夫だよ」



時計を見ると15時半を回っていた。

「え!?もうこんな時間!?桜ちゃん、付き合わせてごめんね!」

「全然ええよ。制服に着替えて教室戻ろ」


もう終礼も終わっている時間。


「安田が付き添ったってって言ってたし、気にしんで大丈夫♪」

「ありがとう」



更衣室で体操着から制服に着替えて教室に向かう。



まだ少しフラつくなぁ。
ご飯食べてないからかな。


「日和、大丈夫?」

「うん、全然大丈夫だよ」


教室に着いた。

ガラッ
「家まで送るで」


教室のドアを開けながら、そう言ってくれた桜ちゃん。


「ううん、大丈夫だよ。ありがとう桜ちゃ…」


目の前に見えた光景に言葉が詰まった。



「足立、おったんや」

「うん。桜、ありがとうな」

「別に〜。私が日和のそばにいたかったんやもん」



鼓動がドクドク速くなる。



「もう大丈夫なのか?」


あれ、おかしいな。



「…はい」


昨日涙出なかったのに、今泣きそう。



「じゃ、私帰るね!加藤待ってくれてるみたいやし。足立、ちゃんと日和送るんやで!」


「桜ちゃん!」


桜ちゃんは私の耳元でひそっと

「いつでも連絡してきてな」


そう言って帰っていった。



放課後の教室。

私と足立くんのふたりきり。




「まだちょっと顔色悪く見えるけど」

「そ…そうかな?大丈夫ですよ!」


泣きそうなのを隠すために、私は足立くんに背を向けて荷物をまとめる。



「あのね!もう大丈夫だからひとりで帰れますよ!」

喋っておかないと、涙が出そう。


「あれ?もしかして待たせちゃってましたか!?ほんとにごめんなさい!」


教科書を鞄に入れたいのに手が震えてるせいか、うまく入れれずバサバサッと落としてしまった。
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