放課後の片想い

「今日は日和のためのコンサートね」

「えっ!私だけ!?」


そんな贅沢な……



「俺が聴いてほしいねん」


聴こえてきたのは、、、


「あ……」


鈴原くんのピアノで聴いて1番好きになった曲。




亡き王女のためのパヴァーヌ




ねぇ


どうしてこんな美しい音色が出せるの?



私はこの音色に


そしてあなたに助けられた。



暗い闇の中から引っ張り出してくれたの。




ボロッ


涙が止まらない。




きっとね


あなたとここで過ごした時間は、私の人生の中でこれからもずっと1番かけがえのないものだと思うんです。


大切で揺るがないもの。



大切で大好きな人。



足立くんとは違う“大好き”


でも、やっぱり私はあなたが大好きです。




3曲も弾いてくれて、私は感無量だった。


「拍手とか照れるんやけど」

「だって…すご過ぎるんだもん!!」



私は今、世界で1番幸せで贅沢者だ。




「なぁ日和」

「??」


「ここは一生俺にとって特別な場所やと思う。ピアノをまたはじめれた、音楽にこうして向き合う事が出来た」


「うん」


うん、本当にそうだね



「なにより、日和に出会えた」



ドキンッ



「出会ってくれてありがとう」



それは…


「私のセリフだよ…」


あぁ、涙が止まらない。




「俺、意地張ってたわ」


「意地?」


「またこっち帰ってくるしさ…会いにも来てよ、彗と一緒に」



「もっもちろんだよ!!絶対会いに行くよ!!」



会いに行っていいんだね!!


「その頃、英語喋れるようになってるんを楽しみにしてるで〜」


「任せて!!」




ガラッ!!


「悠ー!!日和ー!!もう待てないよー!!!」


「桜ちゃん!!」



「ったく騒がしいなぁ、相変わらず」


桜ちゃんの後ろから加藤くんと足立くんもやってきた。




「悠!!ほんまに寂しいねんからね!!私らも会いに行くからね!!」


桜ちゃん泣いてる。



「俺だって寂しいよ。たまに電話したるわ」


「なっなんやねん!偉そうに!!」


桜ちゃん、照れてる。可愛い。



「俺も絶対会いに行くよ」

「あぁ、待ってる。桜と来てや」



こうして5人でいれるのは、あとどれぐらいなんだろう。。


制服でこうしていれるのは今日が最後。



あー、だめだ。


「日和、泣いてばっか〜」

足立くんが私の頭をわしゃわしゃする。




「だってこうしてみんなでいれるのが…」


「いれるよ」


鈴原くん…


「それぞれ離れたって、ちゃんとまたこうして会えるから何も変わらへんよ」



そう…だよね




「うん!!」



笑顔にならなきゃ




「写真撮ろうぜ」


足立くんがスマホをセットしてくれる。



真ん中に私と桜ちゃん

桜ちゃんの隣に加藤くん

私の隣に足立くん

足立くんの隣に鈴原くん



「よーし!はいっチーズ!!」



私にとって、かけがえのない宝物の写真になった。




みんなで校門を出る。



「お世話になりました」


学校にぺこりと一礼する。



「日和らしいね」

優しく笑って私の頭を撫でてくれる足立くん。
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