放課後の片想い

short story 鈴原くんとブラームス


コンクール本選がなんとか無事決まり、大阪でのレッスン。



「私はやはりリストが良いんじゃないかと思うんだけどね」

昔からお世話になってる師匠。



「はい。でも、すみません。今回はブラームスが弾きたいんです」


どうしてもブラームスがよかった。



「まぁ、君がそこまで言うならそうしようか」


「ありがとうございます」



偉大なブラームスに今の俺の状況が似てる、なんて言ったらおこがまし過ぎるんやろうけど


だけどさ、やっぱ似てるんよな。


だからこそ、感情移入がより出来る。



シューマンを師匠として尊敬し、仲が良かったブラームス。
シューマンが体調を崩した時だって、献身的に支えていた。

そう、シューマンの奥さんのクララを含めて。



それだけ仲が良かったシューマンの奥さん、クララをブラームスは生涯ずっと好きやった。


クララも気づいていたはず。



なぁ、辛いよなぁ。

大事な人の奥さんを好きになっちゃうなんてな。



でも、今の俺ならわかる。




こればっかりはどうしようもないんよな。


好きになっちゃったんやから。




この気持ちを


ぶつける所が見つからないこの気持ちを


せめて音に乗せて届けたい。





「鈴原くん!集中してる!?」

「すみません…」


全然集中してへんかった。



あー、腹減ったなぁ。

今頃、日和は何してるかな。
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