放課後の片想い
「えっと…私ですか…?」

思わず敬語。

「あんたしかおらんやん」

ため息を吐く彼。


いや、周りに結構人いますけど。
て言うか、関西弁?


「なんでしょうか?」

恐る恐る質問する。


「ちょっとこっち来て」

そう言って私の腕をグイッと引っ張る。

「え!ちょっと!?」

教室の外へ。


「鈴原くーん!どこ行くのー?」

教室から女子の声が聞こえる。

その声を無視して先に進む彼。
鈴原って名前なのかな?
引っ張られながら、少し冷静に考える私。


「あの!どこ行くんですか!?」

たまらなくなって足を止めた。

ちょうど人通りが少ない廊下の角だった。



「先週の事やけど」



ドキ。
先週…何を言われるんだろう。
勝手に聴いてしまってた事を怒られるのかな。

うん、怒られても仕方ないよね。


「あし…」 
「ごめんなさい!!!!」

彼の言葉を遮るように私は大声で、そして頭を下げて謝った。


「勝手に演奏を聴いてごめんなさい。もう2度とあんな事はしないので許してください」

手が震える。
怖くて震えてるのとは違う。

いや、返事は怖いんだけど。。

急に先週までの勝手に聴いていた自分の行動が恥ずかしく感じたのと、泣きそうで震えてる。

顔を上げられない。

ダメだ。
下を向いているせいか涙が溢れてこぼれていく。


「顔、上げて」

先週と一緒の、少し低めの声が聞こえる。


首を横に振る私。
今顔を上げたら泣いているのがバレてしまう。

失礼な事をしたあげく泣くなんて迷惑でしかない。


「良いから顔上げてや」

不思議とさっきより優しく聞こえる声。

あぁ、私おかしくなってる。
もう訳わかんない。


「泣いてるんか?」
その言葉にビクッとして後ろに下がろうとした瞬間

グイッと顎下を持ち上げられた。


 
「えっっ」

私の次の言葉を塞ぐかのように


「泣かんといて」

そう言って彼は、優しく私の頬に流れる涙をぬぐってくれた。
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