【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
I.
……あ、制服の裾がほつれてる。
歩きながら、私はふとスカートの裾から糸が飛び出してしまっていることに気づいた。
帰ったら早く縫わなきゃ。
由緒正しきクラシカルなこの制服は、母のお下がり。
生地はだいぶ傷んでいるし、あちこちがほつれては直しての繰り返し。
けれど新しい制服を用意する余裕なんて、うちにはないんだ。
季節は7月。
夏の眩しい日差しが肌を刺してくる。
高校まで、一駅分の距離がある。
けれど電車の定期代が浮くように、遠いけれど毎日歩いている。
暑い日差しの元を歩いていると、じわりと身体が汗ばみ、一筋の汗が首筋を伝う。