【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


本当はまだ、黒堂たちに攫われた恐怖が、心に絡みついている。


だけど大丈夫だって言わなきゃ。

そうじゃなきゃ、余計な心配を琥珀くんにさせちゃう。

私は大丈夫。大丈夫……。


動揺を悟られないよう、努めて平静を装って答える。


「なにもされてないです」


続けて「だから大丈夫です」と伝えようとしたのに、それは頬にあてがわれた琥珀くんの右手の感触によって遮られた。

そして切なそうな声が降ってくる。


「おまえはさ、どうしていつも平気ですって顔してんだよ」

「え?」

「俺の前ではもう強がるな」


琥珀くんの言葉が、胸の柔いところに突き刺さった。

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