【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
肩を竦めたままおそるおそる目を開けて、私はその瞳を見開いていた。
だって、目の前にひとりの男子が立っていたのだから。
私に向かって放たれたはずの水は、その男子にまるまる直撃。
女子たちはみんな顔を青白くして、突然現れた乱入者を見上げている。
視線を集める彼は水をかぶった髪をかきあげながら、口を開いた。
「集団いじめは笑えないな」
耳朶を打つ、低音。
その声を私はよく知ってる――。
「太陽……?」
思わずこぼれた私の声を拾い上げ、目の前の彼が振り返り、そして笑った。
「ただいま、莉羽」