【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
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「ふう、疲れた……」
クリーニング店からの帰り道、私は夜の空に向かって溜め息を吐き出した。
今朝も2時半に起きて新聞配達をして、高校で授業を受けて、そのままクリーニング店でバイト。
この生活が毎日続くと、いくら若いとはいえさすがに身体も限界を訴えかけてくる。
私のお給料は、いつもお父さんにまるまる奪われてしまう。
どんなに頑張って稼いだって、私の手元には一銭も残らない。
時々、途方もない虚しさに襲われる。
本当は朝日が昇るまで布団の中で眠っていたい。
放課後だって、環と一緒に寄り道をして遊びたい。
贅沢なことは願わない。
でもただ普通の女子高生らしいことがしたかった。
私の人生は、一生このままなのかな……。
環も私と遊びたいと思ってくれているらしく、今日もバイト?と少し駄々をこねられてしまったけど、ひとり暮らしの資金を集めるために忙しいんだって嘘をついている。
ごめんね、環。
でも家のことを環に知られるわけにはいかないんだ。
優しい環のことだから、きっと心配してしまう。
それに先生や大人にバレたら、今よりもっと両親からひどい扱いを受けるようになるのは目に見えている。