【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


家に帰る足取りが重い。

大きな台風が来れば吹き飛んでしまいそうな小さなボロ家が、私には地獄の入り口に思える。

またあの怒声が聞こえてくると思うと、いつも帰り道は足が竦む。


でも早く帰って夕食を作らなきゃ。

遅れたら、ますますあの人たちの怒りを買うことになる。


「……ただいま」


恐怖に身を硬くしながら、家の中に入る。


いつものように怒声が私を迎えると思いきや。


「遅かったな」


お父さんのどこかぎこちない声が聞こえてきて、私は異変を察知した。

珍しくお父さんが酔っている気配がない。


え……?

なにかあったの……?


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