【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


「ごめんなさい。今、夕食を作るので……」


いつもと違うというのは、余計に怖い。

ふたりがいるであろう茶の間の方を見られないまま、台所に向かおうとした時。


「こっちに来い」


そんな私を、お父さんの声が呼び止めた。


「はい……」


ぴんと背筋が伸びて、身体の動きが止まる。

逆らうという脳は排除され、私の足は怖々と茶の間の方に向かっていた。


「そこに座れ。早く!」


ちゃぶ台の前に座るお父さんと、その斜め後ろに座るお母さん。

お父さんの怒鳴り声に、私は慌ててその前に正座をした。


なぜかちゃぶ台の上には、黒々としたいかにも高級そうなアタッシュケースが置かれている。


こんなに真っ直ぐ正面からお父さんの顔を見たのはいつぶりだろう。


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