【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


顔を上げれば、そこにはいつもの色つき眼鏡をかけ、ガードレールに腰かける彼がいて。


「えっ、琥珀くん……!?」


あまりに浮世離れしたオーラを纏う琥珀くんは、雑多な景色からはひどく浮いている。

そんな自分の美しさになんて無頓着そうな琥珀くんは、へらりと笑う。


「おかえり、莉羽ちゃん」

「琥珀くんがなんでここに……っ」

「はは、驚いてんな。仕事が早く片ついたから、たまにはおまえの迎えに行こうかなって思ったんだよ」

「わ、わざわざですか……?」


琥珀くんがお仕事で忙しいのは知ってる。

それに普段琥珀くんは昼の世界に顔を出さない。

それなのに私なんかのために来てくれたんですか……?


「いーだろ。デートしよ」


そう言って躊躇う私の手を掴んで、歩き出す琥珀くん。

< 148 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop