【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
*
琥珀くんはランジェリーだけじゃなく服や日常品など、いろいろなものを買ってくれた。
あまりの太っ腹さに最初は困惑していたけれど、断るのも失礼な気がして、結局は甘えることにした。
――ちゃぽん。
水滴が湯船の中に落ちる音が、バスルームの中に響いた。
肩まで湯船に浸かった私は、ようやくそこでふうと息を吐き出す。
なんだか目まぐるしい一日だった。
今日に限らず、琥珀くんに出会ってから毎日なのかもしれないけど。
でも太陽には謝らないとな……。
さっき洗面所の鏡を見たら、たしかに首元には赤い痕がふたつついていた。
なんでこれを見て太陽はあんなに怒ったんだろう。
不純異性交遊だって、そんな幼なじみに育てた覚えはないって、親目線で怒ったのかな。
だとしたら……太陽にはちゃんと話すべきなのかもしれない。琥珀くんのこと。
決して、男の人ならだれでもいいわけじゃない。
琥珀くんは大切な人なんだよって、そう伝えよう。
太陽だって、ちゃんと伝えればわかってくれるはず。
その時。
洗面所の方から、ちゃらりんと軽快な音をたてて、スマホが鳴ったのが聞こえた。
もしかして太陽……!?
私は勢いよく湯船からあがると、びしょ濡れなのも厭わず、洗面所に向かう。
そして着替えと共に置いておいたスマホを確認する。
スマホのディスプレイには、やはり太陽からのメッセージが表示されていた。
『話したいことがあるから、明日の15時、駅前の公園に来てほしい』
明日は土曜日。
学校がない日に呼び出すなんて、よっぽど大事な話があるんだろう。
こんな改まって話すのは緊張する……けど、ちょうどよかったのかもしれない。
私にとっても琥珀くんのことを話せる機会だ。
『わかった』と文字を打ち、そして人さし指に思いを込めて送信ボタンを押した。