【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて




琥珀くんはランジェリーだけじゃなく服や日常品など、いろいろなものを買ってくれた。


あまりの太っ腹さに最初は困惑していたけれど、断るのも失礼な気がして、結局は甘えることにした。


――ちゃぽん。

水滴が湯船の中に落ちる音が、バスルームの中に響いた。


肩まで湯船に浸かった私は、ようやくそこでふうと息を吐き出す。


なんだか目まぐるしい一日だった。

今日に限らず、琥珀くんに出会ってから毎日なのかもしれないけど。


でも太陽には謝らないとな……。


さっき洗面所の鏡を見たら、たしかに首元には赤い痕がふたつついていた。


なんでこれを見て太陽はあんなに怒ったんだろう。

不純異性交遊だって、そんな幼なじみに育てた覚えはないって、親目線で怒ったのかな。


だとしたら……太陽にはちゃんと話すべきなのかもしれない。琥珀くんのこと。


決して、男の人ならだれでもいいわけじゃない。

琥珀くんは大切な人なんだよって、そう伝えよう。

太陽だって、ちゃんと伝えればわかってくれるはず。


その時。

洗面所の方から、ちゃらりんと軽快な音をたてて、スマホが鳴ったのが聞こえた。


もしかして太陽……!?


私は勢いよく湯船からあがると、びしょ濡れなのも厭わず、洗面所に向かう。

そして着替えと共に置いておいたスマホを確認する。


スマホのディスプレイには、やはり太陽からのメッセージが表示されていた。


『話したいことがあるから、明日の15時、駅前の公園に来てほしい』


明日は土曜日。

学校がない日に呼び出すなんて、よっぽど大事な話があるんだろう。


こんな改まって話すのは緊張する……けど、ちょうどよかったのかもしれない。

私にとっても琥珀くんのことを話せる機会だ。


『わかった』と文字を打ち、そして人さし指に思いを込めて送信ボタンを押した。





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