【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
「琥珀くん、おはようございます」
黒いシャツに、黒いスーツ。
仕事着に身を包んだ琥珀くんは、私に気づくなりふっと表情を緩めた。
「悪い。起こしちゃったか」
頭にぽんと手を置かれ、朝から顔面フルパワーを浴びてしまった私は、ううと目を押さえたくなる衝動をこらえる。
今日も人並外れた美しさで、同じ人間なのかわからなくなる。
「いえ……お見送りがしたくて」
「え?」
「いつも私が起きる頃にはいなくなってるので……。今日は起きられてよかったです。行ってらっしゃい、琥珀くん。お仕事頑張ってください」
そう言って笑うと、琥珀くんがまだ薄暗い室内の中で、わずかに目を見張ったのがわかった。