【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
琥珀くんは私の髪を撫でながら、優しく語りかける。
「なんかいいな、こういうの。恋人っぽくて」
そう話しかけられている間も、心臓は暴れたまま。
こんなふうに甘い雰囲気で抱きしめられたことなんてなかったから、どんな感情でいればいいのかわからなくなる。
「あ、あの、琥珀くん……っ」
すると琥珀くんは、消え入りそうな声音で囁いた。
「……なあ。嘘でいいから、愛してるって言って」
「え?」
「あー、いや……なんつーか癒しがほしいっていうか」
こんなふうに甘えられることなんて初めてで。
私が驚いた気配を察したのか、琥珀くんがわずかに腕の力を緩め、慌てた様子で声を重ねる。
「や、今の変だったな。間違え――」
「……愛してます、琥珀くん」
考えるより先に言葉が口をついて出ていた。