【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


「どうしたの? 急に」

「いや、少し話したいことがあって。ちょっとそこら辺、歩かないか?」

「うん」


この前喧嘩別れしたような形になったから、少しだけ緊張しながらここまで来たけれど、太陽はいたって普通どおりだった。


青々とした緑を茂らせた並木道。

新緑の中、私と太陽は噴水を背に並んで歩き出す。


「お互いもう18になったんだな」


そんなことをぽつりと吐き出した幼なじみの横顔を、私は見上げる。

木漏れ日を浴びた横顔は、喉ぼとけが大きく出っ張り、鋭い直線が男らしい。

いつの間にこんなに大きくなったんだろう。

小さい頃は私の方が大きかったのに、今では見上げなければいけないほど背も伸びちゃって。

幼い頃のあどけなさはもうどこにもない。


「どうしたの、急に。おじいちゃんみたい」

「それだけ一緒にいるなと思って。もう10年以上一緒にいるもんな」

「そうだね」

「莉羽は全然変わらないよな。素直になれないくせに照れ屋なところも、危なっかしいところも」

< 169 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop