【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


途端、お父さんの顔色が変わった。


「なんだと……っ」


お父さんが怒りに任せて、ちゃぶ台を叩く。

大きな音に、私は思わず肩をすくめた。


「親の言うことがきけないっていうのか!」


見たこともないほどの剣幕だった。

今まではずっと顔色を窺い、ぎりぎりのところで激昂させないようにしていたから、こんなふうに怒鳴られるのは初めてで。


逃げなきゃと思うのに、脚が竦んで動けない。


お父さんがずかずかとこちらに近づいてくる。

そして勢いよく頬を叩かれた。

ビチンッーー乾いた鈍い音があたりに響く。


え……今、ビンタされたの……?


叩かれた頬を押さえたまま、私は呆然とする。


身体を蹴ったり殴られたりしたことはあっても、顔を殴られたことなんてなくて、痛みよりもショックに襲われて。

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