【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


たしかに、彼だ。


「琥珀くん……」


きっちりとした黒スーツに身を包んだ琥珀くんが、なぜかお父さんに手錠をかけている。

後ろには東郷さんもいる。


これはなに……?

どういうこと……?


「お前、黒鉄組とずいぶん癒着してるそうだな。詳しいことは署で聞かせてもらう」

「な……っ、楪さん、これはどういうことだ! あんた、警察のもんだったのか!」

「黙れ」


捕らえたお父さんの身柄を他の人に引き渡すと、琥珀くんが私に歩み寄ってくる。

そして立ち尽くす私の、腫れた左頬に優しく触れた。


「……待たせたな、莉羽ちゃん。遅くなってごめん」


私の前に立つ琥珀くんは、恐ろしいほどに美しく、そして私の知らない(かお)をしていた。





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