【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
そして2年前のクリスマスの日。
当直からの帰り道、俺は雪が舞う寒空の下をひとり歩いていた。
クリスマスソングが流れる街の中、行き交う人々はみんな浮かれている。
カップルは身を寄せ合い、学生たちはきゃっきゃと楽しそうにはしゃいでいる。
……あー、寒ぃ。
早く家に帰らねーとな。
そんなことを考えながら、歩く足を速めた時。
不意に、頭上を覆う大きな影に気づいた。
顔を上げれば、工事中のビルから吊るされた鉄骨が斜めに大きく傾いでいることに気づいた。
鉄骨を支えるロープは今にも切れそうだ。
……あ、やばいやつだ、これ。
影から逃れようとした時、視界が滲んだかと思うと、世界が揺れて。
膝ががくんと折れて、俺はその場に崩れ落ちた。