【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
心臓がばくばくと異常な速さで鳴っている。
身体じゅうから冷汗が噴き出る。
過労がたたったのだと悟った時にはもう遅い。
強烈な吐き気に襲われ、俺は前傾姿勢になって地面に手をついた。
けれど無情にも、ロープは限界を超えて切れたらしい。
ガラガラと音をたてて、大きな影となって俺に迫ってくる。
けれど俺は身体に力が入らず動けないまま。
ああ、死ぬときなんて呆気ないんだなって。
なぜか他人事のようにそんなことを思った時だった。
『……危ない!』
そんなソプラノが耳を攫った。
直後、強い衝撃に身体を押し飛ばされて。
俺を押し飛ばした少女の姿を捉えた瞬間、ぷつりと音もなく意識が途切れた。