【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
『いや、俺は……』
口ごもる俺に、彼女は細い声で続ける。
『ねえ、太陽。あの人、無事だった……?』
『え?』
『ケガ、してないかな……。大丈夫かな……』
多分、俺のことを言っているんだろう。
自分だって怪我してるくせに、なんで俺のことなんか……。
俺のために傷つく人間なんて、どこにもいないと思ってたのに。
俺を別人だと勘違いしている彼女の前で、なぜか訂正することは躊躇われて。
俺は〝太陽〟のフリをして笑顔を浮かべた。
彼女を少しでも安心させたくて。
『ああ、大丈夫。大丈夫だ』