【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
「……はい」
「今、なに考えてるんだ?」
「今、ですか?」
と、そこで唐突にはっと気づく。
目の前の人が、ユズリハの像にぴったり当てはまっていることに。
若くありながら権力組織のトップで、怒ったら怖そうで……。
そこまで頭が回っていなかったけど、もしかして私、ずっとユズリハさんと同じ空間にいた……!?
「あ、あの。貴方がユズリハさんですか?」
おずおずそう尋ねると、その人は眉根を寄せた。
「俺? なわけあるかよ。俺は東郷だ。ま、実質ナンバーツーってとこだな」
いかにも高そうな革靴を履いた長い足を組み直しながら、そう名乗る。
やっぱりこの人も偉い人だったんだ。
纏う風格が他の人たちと違うなって感じてたのは合ってたみたい。