【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて


「そもそもうちの(かしら)は、わざわざこんなところに出向いたりしねぇよ」

「そうですか……」


ほっとしたような。

でもまだ見ぬ恐怖が増幅したような。

そんな複雑な気持ち。


でも東郷さんが声をかけてくれたのは、些細な優しさだったんじゃないかって、そんなふうに思うのは調子に乗りすぎてるかな。

心が弱ってるせいで、なんてことないことさえ優しさに感じてしまうんだ、きっと。

東郷さんにとっては、本当になんでもない気まぐれだったのかもしれない。

けど、それがきっかけで、呆然としていた意識が少しだけいつもの調子を取り戻せた気がする。


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