【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
私は鉄仮面を被り、動揺を悟られないよう、冷静な声音で問いかけた。
「ユズリハさんって、どんな人なんですか?」
すると東郷さんは口元に薄い笑みを浮かべて答える。
「あいつは人間じゃねぇよ」
と。
「え……」
「人の血が通ってない冷酷な男だ。なににも媚びず、なににも心を開かない」
ごくりと、自分の唾を飲んだ音だけが、やけに耳に響いた。
「でもカリスマであることには違いない。生まれながらの王者で支配者だ」
言い捨てるような口調の中に、ユズリハのことを崇拝しているような、そんな心理が隠れていることに気づいてしまった。
獰猛な獅子のような東郷さんを手懐けている人――そう思うと、ぞわりと恐怖が背筋を這い上がってきた。