【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
つんと、香水の匂いが鼻をつく。
そこは新宿を見渡せる、広い部屋だった。
一面の窓から入り込んでくる夜の街の煌びやかなライトのせいで、電気が点いていないのに室内は明るかった。
黒服の人たちは室内に入るなり45度に頭を下げ、私はひとり、部屋の中央で半ば強引に正座をさせられるような形になった。
「――来たな」
白い月の光に照らされ、その人の姿が浮かび上がった。
間違いない、この人がユズリハだ。
3、40代のガタイのいい大男を想像していたから、若く華奢なその姿に驚いたけど、目にした途端にわかってしまったのは多分、彼の風格が人並み外れているから。