【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
あまりの美しさの威力に、息をするのも瞬きも忘れて彼のことを見ていた。
「莉羽ちゃん」
低く澄んだ声だった。
不意に名前を呼ばれ、私ははっと我に返る。
ユズリハが、ポケットに手を突っ込み気怠げに立ちながら、私を試すような瞳で見つめている。
「どう? 男に買われた気分は」
温度のない瞳、声。
ああ、私はこの人にころされるんだって、本能が悟った。
生贄として、私の人生はここで終わるんだ。
そう思ったら、もうなにもかもが虚しくて。
多分それは、死ぬ前のせめてもの反抗だったのだと思う。
「……人間の命をお金で買うなんて、間違ってます」
こんな圧倒的な人を前にそんなことを言ってのけたことに、自分でも驚く。
遅れて恐怖が追いかけてくるけれど、もう取り消すことはできない。