【完】生贄少女は冷酷暴君に甘く激しく求愛されて
するとユズリハが足音もなくこちらに歩み寄ってくる。
「馬鹿だな。この世は綺麗ごとだけじゃ済まないってこと、わかってる?」
突き放すような声に身体を縛られ、身動きがとれない。
するとあっという間に間近に迫ったユズリハが、いきなり私の襟ぐりを掴んで引き寄せた。
鼻と鼻とが触れそうなほどに近づき、闇を映す瞳に全神経を奪われる。
「可哀想に、おまえは搾取される側なんだよ。おまえの両親はな、俺を見るなり頭に地面を擦りつけてきた。自分の娘を差し出す代わりに借金を見逃してくださいって」
「……っ」
……怖い。
身体じゅうが、この人の前で降伏を訴えている。
逆らう気力なんてこれっぽっちも湧かないほどに。
「俺がおまえを買ったんだよ。主人は俺だ。わかったら口答えするな」
「……はい」
喉が絞めつけられて、そう声にするのもやっとだった。
するとユズリハは私の襟ぐりから手を離し、あまりに残酷なほど綺麗に笑った。
「ん、いいこ」